マサオはじれったそうに前足をつけねからうごかしたり、尻尾をちいさくふる。三太はちいさい動きに目をうばわれる。浅井がその肩をこづいた。
「なに話してるのよ」
「大家さんのことが心配で、大家さんもまだ子どもだって」
浅井と杉本は思わず唖然とする。ビビアンの外見は二十代から三十代だが、正確な年齢は本人すら不詳。ただかなり年長者でも、あれは自分より年上だと陰ながら主張する。杉本はとりなすようにいった。
「なかに大家さんいるんだろう?。どうしてるかな」
「なか、みてないんですか」
三太は問いかえす。
「みとらんよ」
杉本は当然だろと胸をはり、浅井はへたなすまし顔をつくる。
「じゃあ、みてみましょうか」
三太がうかがうと、二人はおおきくうなづき、シロとマサオも息をのんでみあげた。期待をせおい三太は扉をノックした。
「大家さん。はいってもいいですか」
すぐに、はいりなさい、と返事がきこえた。だいじょうぶそうじゃないですか、と三太は周囲の同意を求めたが、杉本と浅井は驚愕と恐怖をおしころし、マサオはあとずさりしていた。三太は首をかしげつつ扉をあけてなかへはいる。足元からシロがすべりこむ。後はつづかないので、扉は静かに閉じた。
はいってすぐ、ソファがある応接間は間接照明で暗い。右手からやや明るく、その部屋の中央に赤紫の布を被せた台がある。そこに亜夜人は仰向けによこたわっていた。濃紺のシャツに黒のジーンズのいつもの服装。だが肌はいつもにもまして白く、唇は紫になっている。
ビビアンは脇にたってやや無機質な顔で彼をみおろしている。
三太はしばらくまじまじと亜夜人をみた。確かに普段とはちがう様子だが、病気なのかといっていいのかわからない。健康でないなら病気かもしれないが、さて彼にとっての健康とはなんだろう。
「しんではいないわよ」
ビビアンがいった。
「みたまま、ねむっているだけ」
「どうしてずっとねているんですか」
「……体が変化しようとしているのよ」
「悪い変化ですか」
「よくないわね」
「……原因はなんですか」
「何か変なものをたべたのよ」
はらただしくビビアンはいって、三太のほうをむいた。
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